名古屋地方裁判所 昭和55年(わ)265号 判決
主文
被告人米地稔を懲役一年及び罰金八〇〇万円に、同米地貢を罰金六〇〇万円に、同小脇清史を懲役一〇月に各処する。
被告人米地稔、同米地貢が右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から被告人米地稔に対し三年間、同小脇清史に対し二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人米地稔、同米地貢の両名は、兄弟で和歌山県東牟婁郡那智勝浦町大字勝浦四丁目三番九号において「ホーマー」、名古屋市南区道徳新町六丁目二八番地において「道徳会館」、大阪市大淀区天神橋筋七丁目八番三号において「スカイセブン」、和歌山市元寺町五丁目二番地において「パレス」の各ぱちんこ遊技場を共同経営し、実際の営業は被告人貢よりすべてを委された被告人稔が同被告人の代理人としてその業務を処理し、利益は両名で折半して取得していたものであり、被告人小脇清史は、右両名に雇われ、右「道徳会館」の支配人として、同店の営業を統括するとともに、右「スカイセブン」、「パレス」両店の経理をも委され、合わせて処理していた従業者であるが、被告人稔は、自己の所得につき所得税を免れ、また、被告人貢の前記業務に関し、同被告人の所得税を免れさせようと企て、被告人小脇と共謀のうえ、同人に指示して「道徳会館」や「スカイセブン」の売上の一部を除外し、簿外の銀行預金を設定するなどの方法により所得の一部を秘匿させたうえ
第一、被告人米地稔の所得につき
一、昭和五一年分の実際の所得金額が三、九八七万六、三六五円で、これに対する所得税額が一、八〇五万八、六〇〇円であつたのにかかわらず、昭和五二年三月七日和歌山県新宮市伊佐田二丁目一番地の二〇所在新宮税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六八一万四、二九一円で、これに対する所得税額が一〇七万七、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて右不正の行為により、正規の所得税額と右申告税額との差額一、六九八万一、〇〇〇円の所得税を免れた
二、昭和五二年分の実際所得金額が二、七一三万六、六〇五円で、これに対する所得税額が、一、〇五八万九、七〇〇円であつたのにかかわらず、同五三年二月二五日、前記新宮税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五七八万八、九二一円で、これに対する所得税額が七九万九、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて右不正の行為により、正規の所得税額と右申告税額との差額九七九万三〇〇円の所得税を免れた
第二、被告人米地貢の所得につき
一、昭和五一年分の実際所得金額が三、九八七万六、三六五円で、これに対する所得税額が一、八二一万九、四〇〇円であつたのにかかわらず、被告人米地貢が前記「道徳会館」及び「スカイセブン」の従業者であるとして昭和五一年中に被告人米地稔から合計二六二万五、〇〇〇円の給与の支給を受けたに過ぎないように装い、これに対する源泉所得税額二一万三二〇円を納付するとともに、昭和五二年三月九日、前記新宮税務署において、同税務署長に対し、被告人米地貢の妻米地いつゑ名義により、前記「ホーマー」における所得金額が二八七万六、一〇七円で、これに対する所得税額が二六万三、八四〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、同五二年三月一五日までに前記新宮税務署長に対し、被告人米地貢名義の所得税確定申告書を提出せず、もつて右不正の行為により、正規の所得税額と右源泉所得税額及び右米地いつゑ名義による申告税額との差額一、七七四万五、二〇〇円の所得税を免れた
二、昭和五二年分の実際所得金額が二、七一三万六、六〇五円で、これに対する所得税額が一、〇七二万七、七五〇円であつたのにかかわらず、被告人米地貢が前記「道徳会館」及び「スカイセブン」の従業者であるとして昭和五二年中に被告人米地稔から合計三〇〇万円の給与の支給を受けたに過ぎないように装い、これに対する源泉所得税額二〇万五、四三〇円を納付するとともに、同五三年三月一五日前記新宮税務署において、同税務署長に対し、前記米地いつゑ名義により、前記「ホーマー」における所得金額が二六一万八、五六三円で、これに対する所得税額が二一万三、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、昭和五三年三月一五日までに前記新宮税務署長に対し被告人米地貢名義の所得税確定申告書を提出せず、もつて右不正の行為により、正規の所得税額と右源泉所得税額及び右米地いつゑ名義による申告税額との差額一、〇三〇万八、四〇〇円の所得税を免れた
ものである。
(証拠の標目)
判示全事実について
一、検察官請求証拠関係カード(甲)記載の証拠の標目中、請求番号37.34.35.38.39.36.31.32.33.42.ないし45.64.65.47.48.49.15.ないし30.40.41.同(乙)記載の証拠の標目中請求番号1ないし24のとおりであるからこれを引用する。
一、被告人ら三名の当公判廷における各供述
同第一、第二の各二の事実について
一、前掲(甲)記載の証拠の標目中請求番号52のとおりであるから、これを引用する。
同第一の事実について
一、前掲(甲)記載の証拠の標目中請求番号1ないし6.13.53.54.55.のとおりであるから、これを引用する。
同第二の事実について
一、前掲(甲)記載の証拠の標目中請求番号7ないし12.14.46.50.51.56.ないし59.のとおりであるから、これを引用する。
(法令の適用)
被告人米地稔、同小脇清史の判示第一、第二の各所為は、所得税法二三八条一項、二項、刑法六〇条に該当し、また被告人米地貢については、当時その代理人であつた被告人米地稔、及び従業者であつた被告人小脇清史が共謀のうえ、被告人米地貢の業務に関し、判示第二の各違反行為をしたものであるから、所得税法二四四条一項により、同法二三八条一項二項の罰金刑を科することになるところ、被告人米地稔については懲役と罰金を併科することとし、同小脇清史については懲役刑を選択し、被告人ら三名につき、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役については同法四七条本文一〇条により、また罰金については同法四八条二項によりそれぞれ法定の加重をした刑期及び罰金額の範囲内において、被告人米地稔を懲役一年及び罰金八〇〇万円に、同米地貢を罰金六〇〇万円に、同小脇清史を懲役一〇月に各処することとし、刑法一八条により、被告人米地稔、同米地貢が右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置し、同法二五条一項により、この裁判確定の日から被告人米地稔に対し三年間、同小脇清史に対し二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 塩見秀則)